これが見事に入選して、新聞に掲載された。ところが、家人に見つかって、
厳しく叱られ、以後、読書も禁じられてしまったそうだ。祖母が寝物語にしてくれた この話は、
よく覚えている。
美しい春の光を身に うけてこそ、乙女の血汐は湧くというものなのに…。春の光のような周囲の
理解に恵まれず、心を湧き立たせることが できなかった祖母の哀しみ。その時は、和歌の意味は
よく分からなかったが、何となく、私は春の光を身に うけているという気がしたものだ。
「けいこちゃんは、ええ時代に生れたなぁ。いくらでも勉強が、できるなぁ」
祖母は、そう つぶやきながら、私の心に種を蒔いてくれたのかも知れない。自分の可能性を信じる
ことが できる種を。
今も、美しい春の光を感じている。そして、暖かい血汐を湧かせている。もう、乙女とは言えない
かも知れないが…。